セクターローテーションって、株式投資にとって凄く大事な考え方なのに、あんまり書籍とかないんだよなー。
次に伸びそうなセクターが分かったら、先回りできるもんね。
株式投資をなんとなく続けていた私は、2021年にセクターローテーションという言葉を知りました。
セクターローテーションを使った投資戦略は、株式相場と景気・金利の関係や、資金回転率といった強みを知っておくことは、今後の投資人生にプラスになると考えました。
この記事ではセクターローテーションの概念から、業種別物価指数とチャート分析ツールTradingViewを使った相場の見方など、投資戦略の幅を広げるための情報をまとめていきます。
セクターローテーションとは
セクターローテーションはアメリカの投資家ジム・クレイマーが「株式投資大作戦」という書式で提唱している投資戦略です。
ジム・クレイマーはゴールドマン・サックスを経て、ヘッジファンドの設立、現在は投資情報をウェブ上で提供するインターネット会社TheStreet.comの代表。
景気と金利のサイクルを見ながら、次に伸びるセクター(業種)へと投資先を変えていくのが、セクターローテーションの戦略になります。
好景気>高金利>不景気>低金利といった景気・金利の循環に合わせて、有利なセクター(業種)も変わっていくという理論です。
好景気なら自動車とか家電とか消費財関連が強くなり、不景気になれは生活必需品の食品・医療系が強くなります。
生活に近い業種であれば、何となく消費者の心理からイメージできると思います。
限られた投資資金だからこそ、勝てる可能性の高いセクターを先回りするように、ポートフォリオをリバランスしていきたいところですね。
日本の33業種
日本では証券コード協議会が「業種別分類項目」を定めており、10の大分類の下に33の中分類があります。
通常「業種」といった場合は、建設業、食料品、電気機器など、この中分類を指すことが一般的。
ジム・クレイマーのセクターローテーションに日本の33業種を当てはめると、以下のようになります。
コード | 日本の33業種 | 対応する米国セクター |
---|---|---|
0050 | 水産・農林業 | 生活必需品 |
1050 | 鉱業 | エネルギー |
2050 | 建設業 | 資本財 |
3050 | 食料品 | 生活必需品 |
3100 | 繊維製品 | 素材 |
3150 | パルプ・紙 | 素材 |
3200 | 化学 | 素材 |
3250 | 医薬品 | ヘルスケア |
3300 | 石油・石炭製品 | エネルギー |
3350 | ゴム製品 | 一般消費財 |
3400 | ガラス・土石製品 | 資本財 |
3450 | 鉄鋼 | 素材 |
3500 | 非鉄金属 | 素材 |
3550 | 金属製品 | 資本財 |
3600 | 機械 | 資本財 |
3650 | 電気機器 | 情報技術 |
3700 | 輸送用機器 | 一般消費財 |
3750 | 精密機器 | 情報技術 |
3800 | その他製品 | 通信サービス |
4050 | 電気・ガス業 | 公共事業 |
5050 | 陸運業 | 資本財 |
5100 | 海運業 | 資本財 |
5150 | 空運業 | 資本財 |
5200 | 倉庫・運輸関連業 | 資本財 |
5250 | 情報・通信業 | 通信サービス |
6050 | 卸売業 | 資本財 |
6100 | 小売業 | 一般消費財 |
7050 | 銀行業 | 金融 |
7100 | 証券、商品先物取引業 | 金融 |
7150 | 保険業 | 金融 |
7200 | その他金融業 | 金融 |
8050 | 不動産業 | 不動産 |
9050 | サービス業 | 通信サービス |
米国であろうか日本であろうか、セクターローテーションの理論に大きな違いはありません。
ただ、業種分類の定義は異なっていますので、その企業がどの業種に近い特徴を持っているかを見ながら判断しましょう。
2024年のセクターローテーション
2024年1月30日、31日に開催されたFOMCの定例会合において、主要政策金利を据え置くことを決定しました。
米国金利は天井を維持する形が続いており、いつ利下げを実施するかが注目となっている段階。
セクターローテーションで考えると、好景気を過ぎて、これから金利を下げていこうとする右下のサイクルを進んでいます。
対して日本はというと、ここ10年以上ずーっとマイナス金利が続いてきました。
ようやく2023年から物価が高騰し始め、大企業から積極的に賃上げしていく流れが少しずつ出てきました。
2024年1月に日銀が開いた金融政策決定会合では、大規模緩和を維持すると発表しましたが、賃金と物価の好循環が強まってくれば、金利を上げていく構えは崩していません。
そこで、業種別物価指数よりPERの増減について、各業種ごとに見てみましょう。
コード | 日本の33業種 | 2024年1月 | 前月 | 前々月 | 半年前 | 過去5年平均 |
---|---|---|---|---|---|---|
0050 | 水産・農林業 | 13.2 | 12.9 | 12.9 | 11.7 | 13.8 |
1050 | 鉱業 | 6.2 | 5.7 | 6.3 | 5.5 | 17.0 |
2050 | 建設業 | 13.8 | 12.8 | 12.6 | 12.2 | 10.2 |
3050 | 食料品 | 23.4 | 22.2 | 22.6 | 21.0 | 20.4 |
3100 | 繊維製品 | 24.7 | 24.4 | 25.3 | 25.8 | 27.7 |
3150 | パルプ・紙 | 104.7 | 101.0 | 100.4 | 96.2 | 24.6 |
3200 | 化学 | 20.0 | 19.5 | 19.0 | 19.0 | 20.0 |
3250 | 医薬品 | 27.9 | 26.4 | 27.2 | 27.0 | 28.4 |
3300 | 石油・石炭製品 | 7.9 | 7.3 | 7.6 | 6.3 | 6.4 |
3350 | ゴム製品 | 15.0 | 13.6 | 14.2 | 13.4 | 26.4 |
3400 | ガラス・土石製品 | 26.3 | 24.4 | 24.7 | 24.2 | 16.3 |
3450 | 鉄鋼 | 6.8 | 6.2 | 6.4 | 6.1 | 6.4 |
3500 | 非鉄金属 | 11.8 | 11.2 | 11.3 | 11.6 | 18.2 |
3550 | 金属製品 | 16.6 | 15.7 | 15.7 | 15.7 | 17.6 |
3600 | 機械 | 20.6 | 18.9 | 18.6 | 19.2 | 21.9 |
3650 | 電気機器 | 24.8 | 23.1 | 23.0 | 22.9 | 22.9 |
3700 | 輸送用機器 | 17.4 | 15.4 | 16.4 | 15.1 | 15.7 |
3750 | 精密機器 | 24.3 | 22.7 | 22.5 | 23.1 | 36.0 |
3800 | その他製品 | 21.6 | 19.8 | 19.2 | 19.0 | 21.2 |
4050 | 電気・ガス業 | – | – | – | – | 15.8 |
5050 | 陸運業 | 18.1 | 17.7 | 17.4 | 17.9 | 32.5 |
5100 | 海運業 | 2.5 | 2.2 | 2.0 | 1.7 | 7.0 |
5150 | 空運業 | 22.8 | 21.8 | 21.8 | 24.2 | 16.0 |
5200 | 倉庫・運輸関連業 | 11.3 | 10.7 | 10.9 | 10.3 | 12.9 |
5250 | 情報・通信業 | 22.8 | 26.7 | 26.4 | 26.6 | 22.4 |
6050 | 卸売業 | 10.3 | 9.3 | 9.3 | 9.5 | 11.6 |
6100 | 小売業 | 27.9 | 26.3 | 26.6 | 26.6 | 31.6 |
7050 | 銀行業 | 13.5 | 12.1 | 12.7 | 11.7 | 9.8 |
7100 | 証券、商品先物取引業 | 24.2 | 21.0 | 21.1 | 18.9 | 21.6 |
7150 | 保険業 | 24.8 | 22.3 | 23.0 | 21.2 | 12.6 |
7200 | その他金融業 | 15.0 | 13.9 | 13.9 | 13.4 | 11.2 |
8050 | 不動産業 | 14.5 | 13.7 | 13.9 | 12.7 | 14.5 |
9050 | サービス業 | 35.4 | 34.8 | 33.3 | 33.1 | 36.9 |
総合 | 18.6 | 17.8 | 17.4 | 17.0 | 17.8 |
PERは時価総額ベースで重みをつけたプライム市場(東証一部)の加重平均値
この半年間で株価が伸びている(投資家の期待が集まっている)のは、証券、商品先物業や銀行業、保険業といった金融セクターが目立っています。
また、海運業や輸送用機器といったところも伸びてきます。
セクターローテーションの図に照らし合わせると、株価は左上から右上にかけて進んでいる感じがします。
金利はまだまだ超低金利、景気はインフレが始まろうとしている左上にいます。
今は米国とは真逆の状態ですね。
セクターローテーションを見るときは、金利・景気の実態に対して、株価の方が少し前を進んでいくということを意識しておきましょう。
チャートで見る業種別物価指数
東京証券取引所が33業種の株価を集計して、指数化したものが「業種別株価指数」です。
この33本の指数をチャートに重ねて表示することで、各業種のセクターローテーションが見えてきます。
チャート分析ツールのTragldingViewを使って、2023年7月以降の半年間を見てましょう。
無料でチャート分析できるTradingView
チャート分析ツールの「TradingView」は、アメリカ企業のTradingView Inc.が投資家向けのSNSとして提供しているサービス。
移動平均線からボリンジャーバンド、RSI、MACD、移動平均乖離率、ストキャスティクスなど、標準搭載されているインジケーターは80種類以上とかなり豊富で、オリジナル指標も作れるし、ダウンロードして使える公開ライブラリもあります。
クラウド型のブラウザアプリでなので、PCからでもスマホからでアクセス可能。
無料プランの場合は、保存できるチャートが1つ、表示できるインジケーターが3つまでといった一部の機能に制限がつきます。
それでも、標準搭載されている全てのインジケーターが利用できるのは素晴らしい!
有料プランは14.95$の「PRO」、29.95$の「PRO+」、59.95$の「PREMIUM」と3種類ありますが、この記事で紹介しているような使い方であれば、無料プランで十分です。
TradingViewに業種別物価指数を表示
業種別株価指数のシンボル33業種を重ねて表示すると、このようにどの業種が調子良いのか・悪いのか一目瞭然。
水産・農林業:FAF
鉱業:MIN
建設業:CON
食料品:FD
繊維製品:TXA
パルプ・紙:PAP
化学:CAF
医薬品:PHR
石油・石炭製品:OAC
ゴム製品:RBP
ガラス・土石製品:GAC
鉄鋼:IAS
非鉄金属:NM
金属製品:MP
機械:MC
電気機器:TOPIXE
輸送用機器:TOPIXT
精密機器:PI
その他製品:OP
電気・ガス業:EPG
陸運業:LT
海運業:MT
空運業:AT
倉庫・運輸関連:WHT
情報・通信業:COM
卸売業:WT
小売業:RT
銀行業:TOPIXB
証券、商品先物取引業:SEC
保険業:INS
その他金融業:OFB
不動産業:RE
サービス業:SVS
日経平均株価(NI225)と比較することでと、平均以上に伸びている業種が明らかになります。
PERと株価から見ても、セクターローテーションは左上から右上に移ろうとしており、2024年は右上の業種に注目しておきたい。
こういったチャート分析ツールを活用していくことが、セクターローテーションを使いこなす熟練投資家への近道ですね。
まとめ
ジム・クレーマーは米国市場のセクターローテーションだけど、景気や金利の循環はどの国でも一緒だね。
相場の流れを読むということは、安く買って高く買う株式投資の本質に繋がるもんな。
セクターローテーションの最大の魅力は、資金の回転率にあります。
株価が停滞して、くすぶっているような銘柄を長期保有していても、資金効率は低くなるばかり。
1つの銘柄を長期保有して成長を待ち続けるより、成長の少し手前のタイミングを狙い、小さな利益を積み上げていくことが、セクターローテーションの真髄です。
セクターローテーションで最も大切なことは、景気や金利の流れを感じながら、常に一歩先を予測していくこと。
幅広い情報収集と相場を読む経験・感覚が重要になるからこそ、ベテランの投資家や機関投資家向きの手法と言われています。
最近は相場の流れや各セクターの動きを発信してくれ投資家・相場師もたくさんいるので、YouTubeを活用して相場を読むヒントを拾っていきましょう。
セクターローテーションの手法や考え方、最新の相場の動きを配信されている上岡正明さんのチャンネルはおすすめです。
セクターローテーションの考え方は小型成長株投資でも活用できます。
好調な国や業種をしっかりと捉え、有利な市場の中から強い銘柄を選んでいくことで、勝率も高く安定した利益を得られるようになるはず。
個別の企業を徹底分析するだけでなく、市場を見る・相場を感じるといったマクロな視点で、株式投資を有利に進めることができる投資家になりたいですね。